「ねぇ、周く…………」
 「吹雪っ!!」


 彼の名前を呼んで、そのゲームの話を聞こうと思った時だった。吹雪の後ろから、自分を呼ぶ声がした。
 その声はとても懐かしく、そして耳に入るだけで体が固まってしまうほどの力を持つ。吹雪にとって特別な声の持ち主だった。

 恐る恐る振り向くと、そこには爽やかな笑顔を見せてこちらに駆け寄ってくる男性が居た。サラサラの黒髪に、柔和な雰囲気の容姿、ほどよく鍛えられた体と、長い脚。どこから見ても紳士的な雰囲気の大人の男性だった。
 けれど、吹雪はその笑顔がとても怖くて仕方がない。


 「………星くん」
 「すれ違った時に気づいたんだ。偶然だなー。元気だったか?」
 「う、うん。星くんも元気そうだね。………あの、私、急いでるから」
 「なんだよ。久しぶりに幼馴染みに会ったのに!少しぐらいいいだろ?………そっちの彼は?友達………ではない、よな」


 吹雪が手を繋いでいる周をジロジロと見つめていた。周も突然の事で驚きながらも、頭を下げて「初めまして」と挨拶をしてくれている。
 けれど、吹雪はその場から逃げたくて仕方がなかった。どうしていいのかわからずに、周にすがるように繋いだ手を強く握りしめてしまう。だが、周を巻き込むわけにはいかずに、パッと手を離して、声を掛けてきた相手を見据えた。