「よかった。じゃあ、今夜はいいって事だよね?」
 「え……今夜って……」
 「ここは上がホテルになっているんだ。さっき予約してきたんだけど……そっちにも招待してもいいかな?」
 「………今日、ですか………」


 会ったばかりなのに誘うなんてルール違反だ。そう思いつつも、もう大人の恋愛なのだからそれぐらいは普通だともわかっている。
 彼の手のひらがますます熱くなる。けれど、自分の体も同じぐらい熱くなっておるだろう。

 きっといい人だ。
 だから、ここで断ってしまったら勿体ない。
 躊躇うなんて駄目だ。
 ここでチャンスを逃したら………。

 そう思って口を開いた瞬間。
 テーブルの上に置いていた光弥のスマホがブブブッと鳴った。吹雪は驚き、ついそちらの方を向いてしまう。と、薄暗い店内に煌々と光るスマホの画面はとても見やすくなっており、吹雪はそのメッセージの内容が見えてしまった。


 「………ぇ………」


 予想外の文章に、吹雪は思わず小さく声を上げてしまった。
 そこには、『次のウェディングドレス選びには一緒に行こうね』と、表示されていたのだ。

 ウェディングドレスという事は結婚式だろう。まさか、モデルの話ではないだろう。吹雪は呆然としながらそのスマホを見つめてしまっていると、光弥の視線に気づき見るのを止め、そして彼が掴んでいる自分の手を膝の上に戻した。
 ドクンドクンッと鼓動が大きくなっている。