6話「泣いてもいいよ」





 周と出会って1週間が経ったこの日。
 カフェでは、ホストの練習をするのが目立つ事がわかり、吹雪の提案でカラオケに行く事にした。前回、周がとても甘い言葉を囁き続けたので、隣にいた女の子達に苦笑されていたのに、吹雪は気づいていた。そのため、個室の方がいいと思ったのだ。
 2人きりになるのは恥ずかしいと思いつつも、この方法が1番良いのではないかと考え、提案すると、周も「そうですねー!確かにカフェでホストも恥ずかしいですもんね」と言ってくれたので、安心した。
 意を決して2人で密室であるカラオケルームに入る。彼ならば大丈夫だろうと思いながらも、向かい合って座ろうと決めていたが………それを周は許してはくれなかった。


 「あの!吹雪さんに聞きたいことがあるだけど」
 「………何………かな?」


 吹雪の隣に座り、かつかなり接近して声を掛けてくる周は、真剣そのものだった。
 彼が何を話し始めるのか。吹雪にはわからずドキドキしながら周の瞳を見つめる。彼も緊張しているようで、瞳が揺らいでいるのがわかった。
 もしかして………と、期待してしまう自分がいる事に気づいて、吹雪は自分自身の考えにため息が出そうになる。
 また、すぐに人を信じて誰かとの恋を想像する。それが自分のだめな所だとわかっているはずなのに。