この日も、前回と同じソファ席ため、周とは同じソファに座っていた。
並んで座ると彼をまじまじと見なくてもすむので良い部分もある。けれど、距離が近すぎるのだ。話しが終わると、「じゃあ、そろそろ」と言って、さらに周が吹雪に近づいてきたので、思わず背を後ろに倒してしまいそうになるが、それも腕を掴まれて阻止されてしまう。
「じゃあ、そろそろ練習始めてもいい?」
「ど、どうぞ………」
「では、お言葉に甘えて……」
そう言うと、周は吹雪の顔をジッと見つめた後、甘く優しい言葉を紡いだ。
「吹雪さん、今日も綺麗だね。………瞳は夜空のようだし、唇も艶々で。誘惑されてるみみたいだ……」
「……………」
「じゃあ、乾杯しようか。君に会えた夜に」
そう言うとシャンパングラスの代わりにコーヒーカップを持って周は吹雪の方に向けた。
得意気に微笑み、吹雪の反応を伺う周を見て、吹雪は我慢していた感情が爆発してしまった。
「はははっ………周くん、それは………ふっ、はははは」
「えっ………え、何で笑うの!?」
「だって、その台詞………ふふふふ………」
突然笑い出した吹雪に、周は驚いた後戸惑った様子でおろおろとし始めた。
それを見て彼が本気であの歯の浮くような台詞を言ったのだと思うと、また笑いが込み上げてきてしまう。
周に悪いと思いつつも、これではホストとして先輩に怒られるのも仕方がないと思ってしまった。
「え、ダメでしたか?可笑しいな、こういう台詞がモテるんじゃないの?」
「はははっ!!面白い、それはちょっと可笑しいかも。と言うか、ダサい」
「ダ、ダサい………」
吹雪の言葉にショックを受けたように固まる周を見て、思わず微笑んでしまう。



