それから数日後。
 彼の休みの日、吹雪の仕事終わりに会うことになった。待ち合わせは、この間のカフェになった。


 「すみません。遅れてしまって……」
 「吹雪さん、お疲れ様。いらっしゃい」
 「あ、………はい………」


 吹雪は仕事で遅くなったが、先に店に来ていた周は笑顔で吹雪を迎えてくれた。
 彼の言葉を聞いて、すぐにもうホストごっこ始まっているのだとわかった。


 「今日は寒かったでしょ?ホットコーヒーにする?それとも、疲れに効く甘いものにする?」
 「じゃあ……ホットココアをお願いします」
 「うん。わかった」


 周はそう言うと自分のものと一緒に店員さんに注文してくれた。待ち合わせの時間に来ていたはずなのに、自分の物を頼まず待っていてくれたのだろうか。吹雪は、彼の横顔を見て、思わず微笑んでしまった。


 「あ、そうだ。吹雪さん。練習始める前に、話しておきたいことがあるんだ」
 「え………もう練習始まってるのかと思ってました………」
 「え、なんで……?」
 「だって、さっき「いらっしゃい」って言ったから」
 「あぁ………俺の所に来てくれてありがとうの意味だった。紛らわしかったね。ごめん」
 「いえ………」


 まだ、ホストの練習が始まってないのに優しくしてくれているのだ。それを知って、吹雪は少しだけ嬉しくなるのを感じた。