「ん…………」


 どれぐらい眠ってしまったのだろうか。
 まだ薄暗い室内。起きている人なんていないのではないかと思えるほどの静けさの中、吹雪は目を覚ました。
 隣からは静かな寝息を感じる。
 昨日の大人っぽい台詞や行為、そして色気を感じる表情からは想像も出来ないほどの、子どものような寝顔の彼が居た。
 そんな彼の姿を見て、昨日の事情を思い出してしまい少し照れくさくなりながらも、幸福感を味わった。大好きな人が起きたときに隣にいて、気を許してすやすやと寝てくれている。それが何とも言えない幸せを感じさせてくれる。何度か同じ夜を過ごしたけれど、今日が1番に好きな朝だった。


 「私を見つけてくれて、好きになってくれてありがとう」


 吹雪は、小さな声でそう呟くと彼の頬に小さいキスを落とした。彼を起こさないように、とても短いキスだったけれど、それでも彼への気持ちを込めたつもりだった。

 数年前の陶芸教室の頃に出会っているとは思わなかった。そんな些細なきっかけで、彼は吹雪を見つけてくれた。
 大好きだったり、恋をしそうになっていた人達に裏切り続けられた吹雪にとって、「長い間自分を思い続け、そのために頑張ってくれていた」という事実は、何よりも自分に自信をくれたのだ。自分を特別だと思ってくれる人がいる。それが、吹雪の愛した人なのだ、と。


 吹雪は嬉しさのあまり、彼の方に身を寄せてしまった。周にまた抱きしめて貰いたかったのかもしれない。無意識の行動に、ハッてしたけれど、すでに遅かった。