「ごめん……やっぱり困らせてばかりだね、俺は。今日はキスだけでも幸せだったから………」
 「…………行く………」
 「え………」
 「周くんの家に行きたい」
 「吹雪さん」


 はしたないと思われただろうか。
 恋人になってすぐに、そんな事を女が言うのは嬉しくないのだろうか。
 けれど、吹雪は彼に本心を伝えたかった。自分はあなたと離れたくない。もっと近くに、触れあって居たいのだと。


 吹雪は自分の声が震えてしまっているのに気づいたけれどもう彼には伝わっているのだ。
 きっと、泣きそうな情けない顔をしてあるはずだ。年上らしく、スマートに誘えばいいのかもしれないけれど、そんな事を出来るはずもなかった。
 そんな不安をよそに、周はいつもの優しくそして安心しきった顔で微笑むと、周の額に軽いキスを落とした。


 「………よかった。俺と同じ気持ちで。嬉しい」
 「…………ん…………」


 周の突然のキスに驚き、吹雪は額を抑えながら周りをキョロキョロと見つめる。人通りが少ない場所だったため、他に人はいないようだったが、外でキスをされるとは思わず、口を開けて驚いてしまう。

 そんな様子の吹雪を見て、周は嬉しそうに微笑み、吹雪の手を引いて歩き始めた。