「キスしたくなるぐらい……ドキドキして寝付けないぐらい可愛かったよ」
 「………っっ………そんな事、言わないで……」
 「だって、本当の事だし」
 「私、そんな事言われて、どうすればいいの?」
 「………また、キスしたくなった」


 吹雪は目を潤ませて彼を見上げた。すると、周は頭をかきながら、視線をそらした。
 そんな照れ屋な年下の彼を見て、更に顔だけではなく首や耳まで赤く染まってしまう。そして、どう返事をしていいのかわからずに口を開けたまま彼を見つめたまま固まってしまうと、周は「ごめん、困らせたね」と苦笑した。


 「でも、俺はもっと吹雪さんと一緒に居たいし………もっと触れていたんだ」
 「そ、それは私も一緒だよっ」
 「………じゃあ、俺の家に来てくれる?」
 

 突然の言葉に、吹雪はハッして彼の事を見上げる。だが、その表情には冗談など言う雰囲気ではなく、周は吹雪の返事をただただまっすぐな視線を向けて待っていた。
 その視線は真剣なものでもあったが、少し熱を帯びていて、吹雪は胸がキュッと締め付けられる感覚に襲われた。
 彼の家に招かれる意味など、アラサーの女が知らないはずもない。吹雪は、その言葉に迷いながらも、心の中ではすぐに決まっていた。
 ずっとずっと彼と会えない日が切なかった。そして、恋人になる事が夢のような事だと想像しては胸をドキドキさせていた。
 
 迷う必要などないはずだ。
 吹雪は周が好きなのだから。