3話「利害一致」





 もう日付が変わる前の時間だというのに、カフェバーという場所は、多くの人で賑わっていた。昼間は普通のカフェを営み、そして夜からは照明を落として大人の雰囲気のバーになる。そんな場所だった。夜はメニューにお酒や軽くつまめるおつまみが出ているようだ。
 吹雪とホストだという男が店に入る頃、丁度ソファ席があき、窓辺のあまり他の客の視線に入らない場所に案内された。
 が、カップルだと勘違いされたのか、大きなソファに2人で並んで座るタイプのようで、吹雪はつい逃げ腰になってしまう。が、男はさっさと座り、ポンポンと自分の隣を優しく叩いた。
 もう逃げられない。そう思い、吹雪は観念して彼の隣に座る事にした。


 「お酒飲む?それともコーヒー?」
 「コーヒーがいいです」
 「じゃあ、俺もそうしよう」


 そう言うと、男は手を挙げて店員を読み、ブレンドコーヒーを2つ注文してくれた。


 「さっそくだけど、お姉さんにお願いしたい事なんだけど………」
 「ホストにお金を使うことは出来ませんよ。さっきだって1回だけのつもりだったから」
 

 ホストというのはお金がかかるというのは知っている。ホストにハマってしまった人がどんどん身を滅ぼしてしまうという話を聞いたことがあった。だが、吹雪はただの図書館司書であって、お金持ちでもないのだ。ハマる事も出来ない。もし、彼がそれを望んでいるのならば、すぐに断って帰ろう。そう思っていた。

 けれど、彼は微笑みながら「違うよ」と言った後、何故か恥ずかしそうに微笑み始めた。