「…………私は、ずっと周くんに会いたかったよ」
 「ぇ…………」
 「周くんがどうして私に声をかけてくれたり、あのギャラリーにつれていって行ってくれたのか、わからない。けど………私は、あなたに会えなくて寂しかったの。会いたくて仕方がなかった」
 「吹雪さん………」


 吹雪は自分の頬に温かさを感じ、その時初めて自分が泣いているのに気づいた。
 泣くつもりはなかった。
 けれど、気持ちが膨れ上がり、彼を見た瞬間に会いたいが涙に変わったのだろう。

 吹雪は、涙を拭くこともせずに、言葉を紡ぎ続けた。


 「………だから、周くんが図書館に来てくれたのとっても嬉しかったの。おしまいじゃないってわかったから………。ずっとずっとあなたが来るのを待ってたの。………私、周くんの事が………」


 早く彼にこの気持ちを伝えたい。
 終わりになったとしても、彼の思いが自分とは違うものだとしても。
 そう思ったはずなのに、その言葉は全身が温かいものに包まれた事で止まってしまった。


 「………その続きはまだ言わないで」


 耳元で周の言葉が聞こえる。
 周に抱きしめられている、とそこでやっと気づいたのだ。
 吹雪の事を抱き彼の腕や手は、まるですぐに割れてしまう陶器に触れるように優しいものだった。