24話「雨音」




 恋は苦しい。
 呼吸が出来なくなるような息苦しさを感じる事がある。
 誰かを好きになると、疑ってしまったい素直な好きだけの気持ちでは相手を見れなくなってしまう。それに、自分が好きだけれども相手は違うともっと悲しくなるし、傷つけられ手しまう事もある。
 吹雪はそれを痛いほど感じていたはずだった。


 それなのに、どうしてまた好きになってしまったのだろうか。
 出会ってしまったのだろうか。

 けれど、彼は今まで会ってきた男の人とは違う。そんな予感というか、勘があった。
 昔に出会った幼馴染みなどの男性にも、そんな風に思っていたのかもしれない。好きな時は周と同じように純粋に信じていたのかもしれない。

 吹雪はそれでも違うと強く思えるのには理由があった。
 それは、今でも好きなのだ。
 もし裏切られたとしても、会えなくなっても、まだ周が好きだった。
 どうしてそこまで彼に惹かれているのかわからない。けれど、嫌いになりたい、忘れようと思っても胸の奥底から「嫌いになりたくない」「忘れたくない」と叫び声が聞こえてくるのだ。そして、彼に会いたいと強く思っていた。
 未練がましい事かもしれない。
 けれど、その心が他の人とも違う何かがあるような気がしてならなかった。

 だが、すべては自分の気持ちだけの事。
 周がどう思っているのはわからず、ただただ会えない日を、もうおしまいになってしまったのだと悲しんで暮らすだけだった。


 そんな時に、周が1つの贈り物をくれたのだ。
 彼に会えたこと、そしてきっとまた会える時間をくれた。
 お別れの話しになるのかもしれない。
 また、泣いてしまう事があるのかもしれない。
 けれど、吹雪は1週間をくよくよ心配して過ごすことを止めた。

 何があってもこの日は彼に会えるのだ。
 少し変わったデートだと思えばいい。
 この1ヶ月を思えば、どんな事よりも辛くはないのだから。