23話「小さな封筒」




 泣き腫らした目で出勤する事は出来ず、その日の夜は目を冷やしながら眠った。
 そんな自分を「バカだな」と思いながらも、感情には嘘をつけないから仕方がない。せめても、夢では周と楽しかった時間のように過ごせればいいと思い、その日は夜遅くに眠りにつく事が出来た。


 司書の仕事は、退屈そうに見えるが激務だ。
紙の束である本を何冊も運び棚に戻す。それが毎日だ。受け付けカウンターもあるし、本の修繕などもある。吹雪は本の手入れが一番好きな作業だった。無心で出来るし、綺麗になった本を見るのは嬉しかった。けれど、今はボーッとしてしまう事があるため、周はなるべくはカウンターの仕事をやらせてもらうようにしていた。


 「はい。それでは2週間後までの返却をお願いします」


 吹雪は笑顔で、貸し出しカウンターに来た常連のおばあさんに本を手渡した。「ありがとう、明日見さん」と、スタッフの名前を優しく呼んでくれるのだ。老後に沢山の本を読んで過ごす。そんな穏やかな日々もいいな。そう思って、吹雪はそのおばあさんを見送りながらそう思った。

 年を取ったら彼から貰ったマグカップや、蒼い食器を少しずつ集めて、食事の時はそれを使って楽しくご飯を食べる。それは夢のようだな、と思った。
 その時、自分の隣には誰がいるのだろうか。そんな風に考えては彼の事を思ってしまう。