翌朝。

ベッドで目覚めると、すぐ隣でラプラスがこちらに顔を向けて寝息を立てていた。

「うわっ!」



僕が飛び起きると、彼女は眠そうな呻き声を上げて目を擦りこちらを見上げる。

銀髪に白皙した肌と真っ白なワンピース姿のラプラスは、純白のベッドだとまるで雪の様に透き通っていて――そして息を飲むほどに壮麗だった。

「どうしたの始君? まだ体が痛むの?」



そうだった……昨日の訓練が終わった直後、僕は『ソロモン・リング』の反動で倒れてしまい別室のベッドに運ばれたのだ。

僕が全身の激痛に苦しんでいる間、ラプラスがずっと看病してくれた記憶がある。だけどまさかこんなことになるとは。

「そうじゃなくて……どうして一緒に寝てるの?」

「夜通し看病していたら私も眠くなっちゃって。迷惑だった?」

「いや迷惑ではないけど」



小首を傾げる彼女を見て、僕はドキドキしつつ頭を抱える。

彼女は街中にいたらどこにでもいる普通の女の子だ……と以前言ったが訂正しよう。

この子は一人で街中にいたらあまりにも危険だ。

「ラプラス。君があまり世間に詳しくないのは分かるけど、男にはもっと警戒した方がいいよ」

「どうして? 男って神様よりも恐ろしい存在なの?」

「その言い方だと語弊があるけど……そうだな。例えば、君は自分で私は神様だけど体は普通の女の子だ! って言ってたよね?」

「うん」

「つまりそういうことだよ」

「そういうことってどういうこと?」



瞬きしながらラプラスが起き上がって見つめてくる。

乱れた服の隙間から、少し膨らんだ胸元が見えているのもわざとではないだろう。

これ以上は手に負えない、と僕は戦略的撤退を図ろうとして……全身を走った痛みに呻きながらベッドに倒れた。

「始君! まだ無理したらダメだよ!」



慌ててラプラスが僕を抱き起し、その拍子に胸元が僕の顔に軽く触れた。

ああ……もう、どうだっていいや。

相手は神様で、僕はただの人間なわけだし。相手を一人の女の子として見る必要なんて一ミリもないんだ。

そう言って必死に心を落ち着ける僕を、彼女の次の一言がひっくり返す。



「……だって今日は大事なデートの日なんだから!」