【ピーッ!】

その時、騒がしい警報と共に部屋全体が赤く点灯した。

美しい青で満たされていた部屋は一瞬で赤く染まり、床下の水はまるで血の海と化したかの様に濁る。

星空も無機質なコンクリートの天井に成り果て、ラプラスは焦った様子で叫ぶ。

「早く逃げて!」

「でも……!」

「彼らに捕まったら殺されるだけじゃ済みません! 貴方はこの国の最重要国家機密と接触してしまったんですよ!」

「どうせ死ぬつもりだった! それに行くなら君も一緒だ!」

「ダメです! 私の体には細工がされています……一緒に行くことは」



その時突然ラプラスがうめき声を上げ、両目を抑えてうずくまる。

「どうしたの⁉ 君は一体何をされたんだ⁉」

「早く逃げて! 貴方が逃げないと、私は――」



次の瞬間、彼女は短く悲鳴を上げた。

インカムから青い閃光が放出され、全身には幾何学模様の紋様が走り、無数の光の輪が彼女を覆い尽くす。

そしてその両目の隙間から見えた双眸は、暴力的なまでに鮮烈な青い光で満たされていた。

「お願い……私を……見ないで」



変わり果てた姿の彼女が、僕を悲し気に見つめる。

「……分かったよ、ラプラス」



僕が告げると、ラプラスがゆっくりと頷いた。

光を放つ瞳から、涙が頬を伝う。

僕は、赤く染まった世界でサファイアの輝きを放つ彼女を見据える。

それはまるで、たった一人だけ真紅の世界に抗っている様にも見えた。

そんな彼女に背を向けて僕は大きく息を吸い込むと、



「うわああああああああああ! 化け物だああああ!」

僕は周りに聞こえるよう、恐怖の声を上げながら入口向かって走り出す。

そして走り去る間際、僕に向かって彼女の小さな呟き漏れた気がした。



「……ありがとう。私だけの天使君」