何だ? 暗闇の向こうから脳裏に知らない女性の声が反響する。


『例え忘れてしまっても、思い出して』


誰だろう? 初めて聞くのに、まるでずっと昔から知っていた様な――



『だって貴方は――私に会いに来る為に生まれてきたのだから』



刹那。

視界が明るくなって、青い液体とガラス越しに見えたのは――サファイアの瞳とシルクの銀髪。

ドンッ! と。

胸を撃ち抜かれる様な衝撃と共に我に返り、答えが浮かぶ。

そうか、そうだったんだ。全て思い出した。

僕は最初からここに来る運命だったんだ。

僕は操られる様にキーパッドに触れ、とある単語を打ちこんだ。


『天使』


ガチャ!

解と共に施錠が外れ、扉のランプが緑色に灯って――



僕は約束の彼女と会う為に――まだ見ぬ世界へと踏み出した。