「美味しかった! ごちそうさまでした」

 食後のコーヒーを飲んだあなたが満面の笑みを見せました。どうやら喜んでもらえたようです。

「これ、どうぞ」

 少し照れ臭そうに頬を赤らめながら、あなたが紙袋を差し出しました。今日は、バレンタインデー。中身は確認しなくても、すぐにチョコレートだとわかりました。

「ありがとう」

 そのタイミングで、僕はコートのポケットに忍ばせていた小さな箱を取り出しました。

「待たせてごめん」

 目を丸くするあなた。僕は、そんなあなたをただただみつめるより他、ありませんでした。