終わったはずの恋だった。


「みっき。人の車に乗るのは大丈夫なの?」
「……え。うん。それは平気」

満生の父は何というか、血の気の多い人なので、父が運転する車はたまに暴走する。時に「絶叫マシン」とまで噂される父の運転になれている満生は滅多なことで乗り物酔いはしなかった。

「……じゃあさ、みっき」
「うん?」
「今度、俺の運転で夜景を見に行こう」
「え?」

満生と秋はとても仲がいいとはいえ、これまでプライベートで遊びに行ったりしたことはなかった。

驚く満生は秋を凝視した。満生から視線を外す秋の横顔には緊張が見え隠れしている。

(……夜景。それって、デートって受け取ってもいいの?)

満生はこれまで恋人がいなかったが、恋愛経験が乏しい満生にも、普通、友達同士で夜景など見に行かないことは分かる。

(ねぇ、秋くん。私、少しは期待してもいい?)

「いいね。行きたい!」
「本当?俺の地元に有名な夜景スポットがあるんだ。展望台もあるよ!」
「そうなの?行きたい!行きたい!」