恋人は社長令嬢

「それはご愁傷様。付き合う前に、分かってよかったね。」

至は、埜々香の腕を放すと、クルッと背中を向けた。

「お姉様でも、同じ事を言うの?」

至は首をひねった。

「お姉様?」

「至さんが、お姉様を好きな事は、知ってるわ!」

「ちょっと、待って。俺、君のお姉さん、知らないと思うけど……」

埜々香は、泣きながら至を見た。

「私のお姉様、那々香って言うの。」

「那々香?那々香!那々香!?」

至は一瞬、自分の顔が、“ムンクの叫び”のように、歪んだ気がした。


「この前、お姉様の携帯に、何度も何度も電話を掛けてきたよね。」

「は、はい!」

「何度電話しても出なくて、ある時繋がったでしょう?」