恋人は社長令嬢

埜々香はその日、ドキドキしながら、非常階段まで向かった。

人に自分の気持ちを伝えるなんて、死んでしまいたいくらいに恥ずかしい。


「ああ!もう、ヤダ!!」

埜々香が叫んだ時だ。

「何がもう嫌なの?」

隣から埜々香の顔を覗きこんだのは、目的の人、至だ。

「い、至さん!!」

「また誰かにイジメられたのか?話だったら、聞くぞ。」

「い、いえ……」

「じゃあ、何?」


今だ。今、言ってしまえ!


「至さん……」

「はい。」

「あの……私……」

「うん。」

「えっと…私……」

「うん。」

肝心の言葉が出てこない。

どうして好きの一言くらい、言えないのよ。

「ああ……とりあえず、いつもの場所に行こうか…」

「はい…」

埜々香は、至が気付かないようにため息をつくと、至の後を付いて行った。