恋人は社長令嬢

「別れたのも一緒よ。彼からはもう2週間も、連絡がないもの。」

「会社では会うんでしょ?」

「……彼ね。北海道へ、転勤になったのよ。」

那々香は、目をつぶっている。

まるで、自分の事を思い出しているかのようだ。


「那々姉が彼氏と別れたのって、それが原因なの?」

「そう。」

「何で言わなかったの?」

那々香は黙って、コップの中の水を見ている。


初めてというくらいに見る、那々香の弱い部分。

あの気の強い姉を、こんなにまで弱くしてしまう相手は、よっぽど素敵な人なんだろう。

「梨々香は、そんな失敗しないようにしなさい。」

「それって、失敗なの?」

「失敗よ。お父さんに言われたわ。私がバレる前に相手に伝えていたら、彼は北海道には行かなかったかもって。」

「パパったら……そんな事言ったの?分かんないじゃん、行くか行かないかなんて。」


「でも、もし、伝えてたら……今でもそう思うわ。」

「考えすぎだよ。」

梨々香のセリフに、ふふふっと笑う那々香。

「本当に相手を信じているなら、勇気を出して言うべきだったのよ。」