鴇田は腰を押さえながら「後で衛から湿布でも貰うか」と口の中でブツブツ。
ホントは……ちょっと嬉しかった……
けれど、可愛くなれないあたしは
「あんたももう歳ってことじゃない?それと重い拳銃のせいよ。
今までよく銃刀法違反で捕まらなかったのかが不思議なぐらい」
と言ってやると
「その辺はうまくやってる」と、言って「ふん」と鼻息をはく鴇田。
まぁ、こいつに限ってそんな小さなヘマはしないだろうけど。
鴇田は大きな欠伸をして口元を押さえる。
どうやら一晩中あたしについててくれたのは本当のようだ。
「ねぇ、あんたは何で聞かないの?
あたしが何であんなバカなことやったのか、って」
と顎を引くと、
「別に、話したくなきゃ話さなくていい」と鴇田は頬杖を突きながらそっけなく言う。欠伸をしたせいだろうか、目じりに涙がたまっている。
何なの、もぉ。
薬が切れたから、またいつもの感情が戻ってきてイラつきながらもリモコンに再び手を伸ばすと
それよりも早く鴇田の手があたしの頭の上に置かれた。
え?
怪訝に思って鴇田を睨むと、鴇田は相変わらずそっぽを向いて頬杖をついていて、そのままの姿勢で頭をポンポンとたたく。
「ごめ……なさい」
いつかの……プールで溺れかけたときと同じように謝った。あのときは最初で最後かと思ったし、二度目はないと思っていたのに、あたしは謝った。
鴇田が愛したママの……そしてママが大切に育ててくれたあたしを
自分で断ち切ろうとしていたこと。
「別に、謝らなくてもいい」
鴇田はそっけなく言ったけれど、このときホントあたしのこの性格は鴇田に似てる、って実感した。
素直になれないとこ。