振り返って鴇田の事務所を見つめると、
プっ
軽いクラクションを鳴らされ、あたしは慌てて顔を戻した。
見慣れた黒いセルシオの後部座席の窓からちょっと顔を出した
叔父貴!?
が、にこやかに手を振っていて
「朔羅、偶然だな。帰るのか?
送って行くよ」
普段なら叔父貴の申し入れをありがたく受け入れるが、あたしはセルシオの向こう側……
あぁちくちょう!セルシオが邪魔でSUV車が見えねぇ。背伸びしたり身を乗り出したりして道路の向こう側を見ようとして、叔父貴が怪訝そうに眉を寄せた。
「お前、何やってんだよ」と聞かれ
「あ、うん!いや……」とあたしの返事は変な風になった。
「叔父貴、ちょっとごめん」と言って一応断りを入れて、セルシオの背後に回ると、向かい側の道路のSUV車は消えていた。
くそっ!と舌打ちしながら
でも、アイツ……何でライフル銃なんか―――……
叔父貴もハジキを携帯してるけれど、あくまで護身用だし、けれどタチバナの構えていたあの銃は、明らかに標的がいることを物語っていた。
銃なんてどこで手に入れるのだろう。
戒は以前、通常の……?サツが持つタイプのものなら闇でいくらでも出回っているって言ったけど、“あれ”は簡単に闇で売買されるものなのだろうか。
色んな疑問……と言うか疑心が浮かび上がり
「朔羅?」と叔父貴に呼びかけられ、思考は途切れた。「どうした?」と聞かれ
「ううん、何でもない」
結局、そう答えるしかできなかった。