でも絶対居る筈!
あたしは視線をあちこち這わせると、途端にあたしを見る…いや、いっそ監視するような視線があたしに集中した。
通りすがりのサラリーマン。いかにも仕事終わりを装ってるが、只者じゃない。
それにケータイでお喋りしているお姉さんも、自転車で移動中の宅配便のあんちゃんも、カフェでお茶してる二人組のカップルも、
―――普通じゃない。
かと言って筋者でもない。
文字通り、あたしは監視されている。
それぞれ視線は違う方向を見てたし、何気なさを装ってはいるが、みんな殺気だっている。
街中の視線を一気に浴びた気がして、居心地が悪く逃げるようにして歩き出したところで、ふと足が止まった。
向かいの道路に横づけされている黒いSUV車。全面スモークガラス張りで、それだけでも充分不審だが、後部座席の窓がちょっとだけ開いていて、そこからキラリと光る何かを見た。
それが何なのか理解するのに数秒だった。
ライフル!?
そのスコープ越しに、刺すようにあたしを見ているのは―――
じっとそこを見ていると、いやいっそ睨むと言った方が正しいか、スコープの先がちょっとずれて、
予想した通り、ライフル銃を構えた
タチバナが、どこか余裕のある表情で「ニヤリ」と不敵に笑った。まるで挑発されているような……
気がする。
あたしが標的なのかと一瞬思ったが、そのスコープの先はあたしから逸れてあたしの背後
鴇田組の事務所に向けられてると気づいた。
何で―――……?