「どうしたの~?あ、組長なら今日やす…」
「休みだってな。てか何であたしが訪ねる理由がアイツなんだよ!どいつもこいつも!!」と思わず勢い込むと
「何となく~、だってうさぎちゃんが僕を訪ねてくれるワケないって知ってるし~
うさぎちゃんは僕が迫ると逃げてくし」
よぉくご存じのようで。
本来ならこんな変態野郎の所に一人で訪ねたくもないが……
じっ
あたしはタイガの野郎を眺めて、その口元に視線をやった。
薄いけど軽薄そうに見えないのが不思議だ。セクシーともとれる。
う゛~ん……
じっと見てると
―――ホントにあたし、こいつにキスされたのかな。
思いの他距離をつめてたのかな。いつの間にかすぐ間近にタイガの顔があって、
「うさぎちゃん……そんな、あっつい目で僕を見つめて…ようやく僕に応えてくれる気になったの…?」
そっ
何を勘違いしたのかタイガがあたしの手を握ってきて、
「違う!気安くあたしに触んじゃねぇ!」
バキぃ!
例の如く鉄拳がタイガの顔に命中して、タイガは後ろにひっくり返る。
「あ、兄貴!」と近くに居た組員が慌てて起こすのを手伝っていて、タイガは鼻血なんか出しながら、のそりと起き上がり
「うさぎちゃん……相変わらず激しいね♪」
と、どこか嬉しそうだ。
色男が台無しだな。ってか相変わらずの変態っぷり。
「オヤジの攻撃をあっさり避けるのに、お嬢のパンチはあんなに攻撃力が!」
「一家に一台……じゃねぇが、ここに置いておきたいな」
「可愛いし」
と組員はひそひそ。てか一家に一台ってあたしゃ家電か!
と突っ込みながら、こんなパンチをアッサリ食らうぐらいだし、そもそもあたしは簡単に唇を奪われるタマじゃねぇ。



