あたしは、ユズがその元カノと元サヤに戻ってくれることを祈った。
ユズは極道っぽくないが、やっぱヤクザには変わりねぇし。
キョウスケに失恋しちまったから、これで悪の道は絶たれた。
リコにはお天道様に顔向けできるまっとうな道を歩んでほしいぜ。
腕を組んでしみじみしていると
「あ、俺!そろそろ時間なんで出かけてきやす!」とユズが席を立つ。
「おー行ってこい。今日は特別サービスだ、帰ってこなくてもいいぞ?」
と下卑たニヤニヤ笑いを浮かべていると
「いえ、俺の家はここなんで。
“家族”が居るこの家に
帰ってきます―――」
ユズは真剣に言って、軽く手をあげると台所から立ち去った。
あいつ……
ちょっとかっこいいじゃねぇか…と思ったが、すぐに
「おい!片付けぐらいしてけってんだ!!」
あたしは食い終わったカップラーメンの空を手で握りつぶし、掌の中でひしゃげた音がした。
「……まったく、どいつもこいつも…」
昨日はタクがピザの空き箱をそのままにしてったし、今日はユズ。
あいつらすっげぇ仲が悪いくせに、こーゆうところだけ一緒。
「手を焼かせやがって」と悪態を付きながらゴミ箱にその空のカップラーメンを睨むと
「あれ……?」
あたしはカップラーメンのパッケージを眺めた。
「どうしやした?」と壱衣が振り返り
「いや……何でもない」
あたしはそっけなく言うと、今度こそカップラーメンをゴミ箱に放り入れた。
そう言えば、あいつ……
タイガの野郎も同じラーメン食ってた。
しかも、その後、タクが取ったピザと同じピザをあいつのマンションで食った。
偶然……?
にしちゃ出来過ぎてる気がした。



