慌てて飛び降りたから着地のこととか考えてなかった。


ほとんど転がるように何とか庭に着地したところで、伊予原 椿紀がガーデニングしてたのだろう、その土がクッション替わりになってくれたみたいで、


「……ってー…!」


『戒さん!ご無事ですか!』と響輔の声もイヤホンを通じて聞こえてる。


「ああ、大丈夫や!それより車!表に回せ!」


『了解』


頭の後ろに手をやって、額から血が出てることに気づいた。だが、のろのろしてる場合じゃない!


二次爆発もあるだろう。


「くっそ!」


俺は来た道を逆戻り。庭を横切り玄関から飛び出ると


キキッ


とブレーキを踏む音が聞こえ、


「戒さん!乗ってください!」


と、ご丁寧に助手席の扉を開けておいてくれた響輔が車を横づけして、俺はその車に飛び込んだ。


助手席の扉が閉まる前に車は走り出し


次の瞬間予想通り、二次爆発が起こった。


大きな爆発音が背後から聞こえ、助手席からそろりと外を覗くと、さっき見たこぎれいな一軒家は跡形もなく、炎に飲まれて巨大な煙が空を覆っている。


「ふー、間一髪!」


思わず、ずるずるとシートに背を預けると


「危ないところでしたね」と響輔も真剣。


俺は再び、一軒家があったであろう場所を睨み


その見る影もないその建物を、まるで―――赤くて黒い魔物が飲み込んでいるように見えた。