『私が無線を傍受できないと思っていたのかい?
見くびらないで欲しいね』
とタイガは低い声で愉しそうに笑う。
くっそ!
やっぱり移動した後か!
『私の“大切なもの”に手を出そうとした
君たちの勇気は称える。
だが、
それが同時に君たちの破滅に繋がる。私を脅した代償は大きいよ?
私を怒らせるとどうなるか、身をもって知りたまえ』
タイガの余裕のある声を聞いて、はっ!となった。窓の外でうっすらと照らし出す月の光が俺の足元でキラリと光る何かを照らし出している。その先に続いているものが何なのか確認しなくても分かる。
「響輔!撤退だ!!今すぐそこを出ろ!」
俺が怒鳴ると
『了解!』
と、響輔の緊迫した声が聞こえてきた。
『私は逃げも隠れもしない。
聞きたい事があれば、明日鴇田組の事務所に来たまえ。
ただし、命があったらね―――』
タイガの高らかな笑い声を聞いて俺は、改めて俺の足元に張られたピアノ線の先を見て―――そこは手榴弾がつけてあった。
しかしその罠に気づくのが一瞬遅かった。ピンが外れるとほぼ同時、俺は走り出した。
ガシャン!
派手な爆発音が聞こえて、俺が飛び出てきた部屋から爆風が巻き起こり、その威力は相当なもので、俺は爆風に押されるように壁に追突した。
あと一歩遅かったら間違いなく命を落としていたに違いない。
部屋は爆発のせいであちこちに炎が起こっている。
『戒さん!』
イヤホンから響輔の緊迫した声が聞こえる。
俺は耳を押さえて……
ちっ!今の爆発で耳の機能が悪くなっている。
一時的なものだろうけど、今は五感をフルで活用しなければならない。
その一つがほぼ使いものにならない状態だ。
「俺は大丈夫や!お前は―――」
と、言いかけたところで、異様な程強烈な“火薬”の臭いが一瞬、鼻の下を掠めた。
ヤバイ!!
俺はなりふり構ず狭い廊下を走り、突き当りの二階の窓をバットで割った。
そこから飛び降りるとほぼ同時、
ものすごい爆発音が聞こえ、さっきとは比べ物にならないぐらい巨大な爆風が俺の背中を押した。
『戒さん――――!!』
無線の内耳イヤホンから響輔の叫び声のような声が聞こえた。