。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。



俺の質問に、相手は鼻白む様子もなく


『それがどうした?ニュースで報道されてただろ』


と、どこまでも余裕の言葉だ。


だが、その余裕どこまで持つかな――――?



「畑中組は裏カジノで金を荒稼ぎして、さらにそのカジノを隠れ蓑に、コカインの売買がされてる、


そこまで知ってんぜ?」


俺が言うと、一ノ瀬の親父は流石に自分の息子と同じ年齢(正確には違うが)の小僧がその事実を知っていることに驚きを隠せないようだ。俺とテーブルに置かれたケータイの間で視線を行ったり来たりさせている。


『それも計算済みだ?俺と彩芽さんで、お前たちを導いた』


との返答に、再び親父が目を開いて俺を見てくる。流石にそこまでは知らされてなかったのだろう。


「道案内どーも。でもゴールまで、まだ先が長いぜ?」


と言ってやると





『近道をする方法がある、と言いたいのか?


だから俺にコンタクトを取ったんだろう?』





タチバナの声が一段と低くなった。


よっしゃ、食いついてきたぜ。


俺は心の中で小さくガッツポーズ。




「ある。


畑中組で、無理やり働かされていた女の身柄を確保してある。



その女が証人だ」



正直、これだけの材料でタチバナが動いてくれるか、賭けだった。


証人と言っても、あの女も深くは知らされていない。男が借金作って、知らないうちに保証人になっちまってて、無理やり畑中組の「クラブZ」で働かされてただけ。


それを俺たちが偶然にも助けた、ってワケだ。


証拠能力は極めて弱いが、これだけしか俺の材料はない。この先は話術で勝負するしかないのだ。



「畑中組は、クラブZで裏カジノをやってて、そのまた裏でコカインを売買してる。


それに加えて“人身売買”だ。


ヤツらは借金のある人間の保証人に女を選び、そのうえ借金を返せずトンズラした場合、担保として女を利用する。



違法な取り立てだ。


『貸金業法』の第21条に該当するんじゃね?



罪状が幾らあっても足りねぇな」



俺は“人身売買”と、“貸金業法”と言う所をわざと強調して言うと


『ほぉ……それは知らなかったな』


と、タチバナも……或は手を組んでる筈の琢磨さんも?気づかなかったみてぇだ。



『その女の居所は?』




と早速聞いてきて


俺は―――





賭けに勝った―――と初めて実感した。