いや、でも“その相手”を見つけるのも、このプールパーティーでは相手になりそうな女がいない。もっと賢くて、もっと世慣れしていて、もっと上品で、色っぽく……
ダメだ。俺は理想が高いのだろうか。
と言う意味でプールを眺めていると、遠く離れた出入り口の扉が開き、そこから
赤い水着の女―――
が登場した。
白い透ける素材のロングカーデの裾と、顎のラインでカットされた、軽やかな髪をふわりとなびかせて。文句の付けどころのない抜群のプロポーション。白い手脚は長く、小さな顏に大きめサングラスをしていたが、それを取り払いながら、こちらへ向かってくる。姿勢の良い歩き方も知性を感じさせた。
サングラスが取り払われた顏は美人だった。二十代半ば。モデルや女優のような。
紅い唇が勝気に笑んでいる。
いい女―――だった。
女の登場で、プールやプールサイドでくつろいでいた男たちの視線が女に集中する。女はその視線をもろともせず、迷う素振りでもなくまっすぐに俺の元にやってきて、
「隣、いいかしら」と俺の隣のデッキチェアを目配せ。今まで思い思い時を過ごしていたであろう男たちが一斉に舌打ちしたように思えた。
「ええ、どうぞ」俺が頷くと女は、これまたスマートに腰掛け、シャンパングラスが乗ったトレーを持ったウェイターが近づくと、優雅にその一つを取りあげ、脚を組んだ。
白くてすんなりした脚、太ももの辺りは成熟した女のラインを描いている。
じろじろ見るつもりは無かったのだが、興味はあった。この女はここに来ているどんな女よりも異種族のように思えたから。
温室育ちのお嬢ちゃんじゃない、かと言って若手社長が連れてきたのであろう、SNS映えするようなポーズを撮ることばかりに夢中な、中身の無さそうな女とも違う。
妙な場馴れ感と、落ち着きは知的で、適度に上品な色気がある。
婚活
してみるか?



