。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。




TRRRR…


スピーカーにしてテーブルに置いたケータイから呼び出し音が鳴り、だが相手は3コール程で電話に出た。


『はい、橘』と短く名乗った言葉はどこか事務的に思えた。俺の口元に笑みが浮かぶ。


思ったより良く響く重低音。爽やかに聞こえるが、どこか重みを感じる。


それは“ふつう”と違う一種別の人種を思わせた。


「こんな時間にすみません、一ノ瀬です。四課の……一条警部の部下の…」


“部下”と言うとき親父はちょっと言葉を濁した。


だが、タチナバの方は


『……ああ』とすぐ納得したのだろう、頷き


『どうしたんですか?一条さんなら、一緒に居ませんよ』と丁寧だが、どこか鼻に付く物言いで、それを親父も感じ取ったに違いない、苦い顔を俺に向けてきて、俺も苦笑。


「いや、一条警部の居場所ではなく、他に聞きたいことが…」と親父が言ったところで




「よーぉタチバナ、“洒落た私服”だな。


龍崎 琢磨のバカ倅の虎間だ。



虎間 戒だ」



と親父の言葉に被せるように言って名乗ると、相手に一瞬の沈黙があった。


だがほとんど間を置かず、すぐに


『新調したばかりでね』


と、俺の皮肉もあっさり受け流すのもスマートだ。


俺はタチバナと会ったことないから顔を知らないが、朔羅いわく『イケメン』らしい。それも龍崎 琢磨の隣に並んでいても引けを取らない高レベルだそうだ。