。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。


と言うワケで、俺は今、都内の高級ホテルの広い屋内プールのデッキチェアに腰掛け、うろうろしているウェイターから適当にシャンパングラスを受け取り、プールの中で戯れる男女を眺めている。


結局ゴルフは諦めた。下手なうえに無駄に広いゴルフ場を回るのは無意味な気がしたから。せっかくできた時間を接待などで無駄にしたくない。


とは言っても…プールが良かったかと言われればそうでもない。


プール内ではしゃぐ誰もが水着姿だが、俺は流石に紋が入った上半身をさらすわけには行かず、ジーンズと白いシャツと言う格好で、泳ぐこともなくただデッキチェアに腰掛け、何をするわけでもなくぼんやりとその光景を眺めている。その間、幾人か女に声を掛けられたが、それを取り繕った笑顔でスルー。


ビジネスの相手を探す目的で来たが、年齢層は二十代前半が大半で、老舗ブランドの方は二世三世のお坊ちゃんお嬢ちゃんと言ういかにも世間を知らなさそうな温室育ちそうだし、若手で起業した社長らしき男たちは中身が無さそうなチャラ男ばかり、その男共が連れで呼んだのであろう女はもっと中身が無さそうで、おおよそ相手になりそうな者が居ない。


文字通り『パーティー』だ。


来て損したぜ。時間の無駄だった。


しかしすぐ帰るのもどうかと思われた。帰った所でどうせやることなくて暇だしな。少しばかり観察してみるか…と思ったが、意外にも女から声を掛けられる。仕事ばかりでとてもじゃないがそんな暇など無かったが、


俺は結構イケるのだろうか。女は大抵、最初の方こそアプローチしてくるが、だんだんと俺の顏と態度が怖いとか言う。


『いかにも』と言う人相がいけないのか。それとも雰囲気?まぁどっちでもいいけど、久しぶりに女からのアプローチで、


ほんの少し……


婚活でもしてみるか、と思った。


朔羅への気持ちが薄らいだ、とかそんなんじゃない。


俺がいつまでも独り身だと朔羅のヤツが心配するから。俺がまたあいつに気持ちを伝えて、あいつを苦しめたくない。だからかりそめと言え、お飾りの“恋人”でもいればあいつは安心するんじゃないか。そんな気がした。





朔羅は―――





あいつの何もかも奪って手に入れ、鳥かごの中にとじこめ、俺だけがあいつを守り、一生俺だけしか見ないように、そうしたい、と思うと同時に


絶対に手にしてはだめだ。あいつは―――……あいつだけは俺の聖域。と理性がいつもせめぎ合う。


一言では言い表せないんだ。


世界一幸せにしたい、


そう願うも


世界一不幸にしてしまうのが―――分かっている。


複雑なことを想うのが時々、どうしようもなく苦しくて疲れるときがある。


そんなとき、少しもの癒しがあったのなら、俺は―――




変われるのだろうか。