そう言うワケで、朔羅は友達と(戒がくっついていく)旅行に行くことになった。
今日はその旅行の二日目だと言う。
朔羅に電話をしてどこに行き何をしているのか気になって仕方がない。
しかし初めての女友達との楽しい旅行中に電話を掛けて邪魔をする程無粋なことはしたくない。
それに
スネークの近くに居るよりマシか、とも思えた。
しかしタイガのヤツも消息不明だ。あいつが朔羅の周りをうろちょろするかもしれない、と思ったがどうやら『身辺整理』で忙しいらしい、と鴇田から聞いている。
朔羅は数日前、タイガの(正式には鴇田の)事務所に一人で向かったようだが、朔羅は傷ひとつ負っていなかった。機嫌が悪いわけでもなさそうだったし、タイガは朔羅に手を出してないようだ。その後俺がピックアップしたから覚えている。
しかしタイガは何故―――…目の前に居たターゲットの朔羅に手を出さなかった?
鴇田の事務所内だったからか。
いや、そうとも思えない。白虎のクソガキ共が事務所に乗り込むとタイガは本心を露わにして飄々としていたらしい。ネズミの存在を恐れていたようにも見えなかったようだ。
それに何よりあいつの出した期限は一週間。その約束を守ってくれるのなら安全だと言える。
そして俺は……
「暇だ…」
怒濤の締日も無事終え、仕事上では区切りもついた。打ち合わせも会食も何の予定も入っていない。滅多にないことだったが、朔羅が旅行に行くと決まったときに限って、図ったように暇になりやがって。
「久しぶりにゆっくりされてはいかがですか」
と短いランチタイムから戻ってきた鴇田に提案されたが、マンションに帰っても結局やることが無い。映画でも見るか?いや、DVDを借りに行くのも面倒だ。料理は……生憎だが超が付くほど苦手だ。ゲーム、はやらないし。
暇つぶしにタチバナを誘って飲みにでも行こうか、と考えもしたが
『今日は非番だがな、嫁が餃子食いたいって言ったから今から餃子を作るところだ。スーパーなう♪』
とかフザケタ返答が帰ってきて、てかお前程スーパーが似合わない男は居ないぜ、とちょっと思ったり。
鴇田は―――……いや、こいつだって最近色々あったし疲れてるだろう。
こいつこそゆっくり休んだ方がいいんじゃないか。
と、俺が心配になる程ちょっとやつれてる。
その逆でイチの方は順調に回復しているようで、良い意味でも悪い意味でもいつも通りらしい。
元気になったイチに振り回せれてるのか?いやイチのヤツはキョウスケと旅行に行ってる。つまり鴇田はいっときと言え厄介事から解放されているようだが。
と言うことは
キリに生気を吸われたか、とちらりと思ったが、いつも無駄に色気を振りまいているキリも言葉も少な目に大人しく仕事に集中している。
何だ?喧嘩でもしたのか?
まぁ喧嘩ぐらいするだろうが二人ともその辺の所はしっかりと線引きするタイプで、そう考えると、その喧嘩のレベルが相当なものだと悟った。
空気は多少重いものの、二人ともいい大人だ。本人たちが解決するだろう。



