別に、響輔に貢がせたいわけじゃない。


今まであたしの周りにはあたしに貢いでくる男はたくさんいたけれど。そうじゃない。


あたしが欲しかったもの―――


出てきたのは、小さな葉っぱの形をしたお皿がたくさん、これまた小さな色とりどりの焼き菓子が乗ったものと、三種類のジャムの上にお洒落にムースが入ったグラス三種類、それとイチゴ色をしたシフォンケーキがオシャレにカットしてあって、その上に更にオシャレな花やイチゴで飾られてて…


何よ、可愛いじゃない!


「わ、記念に写真撮っておこ」


あたしはブログやSNSなんてやってないけど、記念すべき響輔とのデートの想い出。


スマホをスイーツに向けていると、


「俺も」と言って響輔も隣でケータイを取り出している。


てっきり、スイーツを撮ってるものだと思ったけれど、


「ねぇどれから食べる?」と顏を上げたとき、ケータイはあたしの顏に向けられていた。


びっくりして目をまばたきさせると


「ちょっとぉ、スイーツ撮らないの?」と口を尖らせるも


「一結撮っとった」


「え?」


それって待ち受けにしてくれる、的な?


「“一結のお部屋”※にアップしよか、思うて」
※。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。『★ ICHI ★』参照


………


「てか!相変わらずワケの分からないブログやってんのね!この金の亡者っ!※」と目を吊り上げると(※一結狙いのオタクがわんさかアクセスすると、ワンクリック100円!♪)


「やってへんて」と響輔は笑う。白い歯を見せて屈託なく。


やだ……何、その笑顔。


殺人級にかっこいいじゃない!!!


しかも予期せぬ、出し抜けに「にこっ」って卑怯過ぎるわ!


しかも


「あんたの表情きれいやったから」と響輔は撮った写真を見せてくれた。


確かに…素人が撮ったとは思えない程構図も、光の辺り具合も良い感じ。


しかも『きれいやった』って……


「一人じゃつまんない。だっていつもと同じだもの」と口を尖らせて「二人で撮りたい」と言い出すと、響輔は顏をしかめた。


何よ!あたしと写るのがそんなにイヤなの!


キーっとまたテディの耳を引っ張ろうとしてると


「写真撮られると魂抜かれる」


響輔は無表情に言って


「響輔って……」あたしが憐れな何かを見るような目つきで響輔に問いかけると


「その先は言わへんで」と響輔は手で制した。


「何考えてるか分かんない」


「だから言わへんでって」


響輔がむくれてそっぽを向く。


「嘘、嘘(笑)魂抜かれるなんて昔の話だから、ね、一緒に撮ろうよ」といつになく素直にお願いすると


「一枚だけなら」と響輔はしぶしぶと言った感じで頷いてくれた。