真剣にマップを覗き込む響輔。あたしもマップを……どころじゃなくてその横顔を見つめてる方が幸せ。


あたしってこんなだっけ?と自問自答したい程、浮かれてる。


その響輔がふいに顏をこちらに向け


あたしは高いヒールを履いてるから殆ど身長が並ぶぐらいで、目の前に響輔の顏が。そのままキスできそうな至近距離にドキドキ心が鳴ったけれど


「あんた…」響輔が口を開き


「ほんまに真剣に選ぶつもりあるん?」と目を細める。


「あ、ああ!うん!選ぶわよ」慌てて今度こそマップを見ようと思ったけれど


「あ、俺行きたい所できた」とマイペースな響輔はあたしの意見を無視して、それでも繋いだ手を離さず歩き出す。


ほんっっっと!マイペースだけど、


でもでも






好き。





響輔が向かった先は、ここら辺ではちょっとお高めなカフェ…と言うかレストランに近いお店だった。白い壁にこげ茶のインテリアが自然に馴染んでいる。


意外…響輔がこうゆう店を選ぶなんて。あたしは割とこうゆう雰囲気慣れてるけど。


案内されたのは運良く奥まった席で、丸いテーブルの四人掛けの席。向かい同士って何か他人行儀な気がしたし、丸テーブルならさりげなく響輔の隣の席を選べる。


響輔が座るのを待っていると


「はよ座って」と奥を促される。


「あ、うん…」慌てて奥の席に腰を落ち着けると、響輔はさも自然のように隣に腰掛けてきて…


何かこれって(やっぱり)恋人同士だわ!とドキドキしてたのはあたしだけで


「ここならあんたの正体バレへんやろ」と響輔が無表情に言う。


あっそ!


キーっ!とあたしの…今日はヴィヴィッドなブルーのロエベのバッグにくっつけたテディの耳をかじってると、


ふわっ


響輔があたしのキャスケットを頭から取りあげた。


「え……」


次いで響輔の両手があたしの耳ら辺にくると、ダテメガネも取り去られる。


「ここならパパラッチに狙われんやろ、俺が楯になってるし」とほんのちょっと目を伏せて淡い笑みを浮かべる響輔。


「……う、うん!」


恥ずかしいな、あたしきっと顏赤くなってる…


だって今までと同じで、今までと違う響輔だもん。


赤くなった顏を隠すようにメニュー表を眺めてると


「何や、素直な一結は気持ち悪いわ」と。


………


「すみません!」あたしは近くにいたウェイトレスを呼び止め「これ!この一番高いのください!」と目を怒らせて注文した。


響輔はやっぱ響輔で、恋人同士って関係になっても変わんなかった。


でもそれが、いいのかな?