「何かね、お父さんに話が聞きたいみたいよ?刑事に憧れてるんですって♪」と一ノ瀬の母ちゃんが笑顔で親父の肩をぽん、と叩く。
「でも、うちのお父さん刑事て言ってもちょっと特殊でね~」と母ちゃんが苦笑い。
知ってるぜ?
だから、利用させてもらう。
その動作に
「へーえ、話を……ねぇ」と一ノ瀬の親父は気のない返事。
ここに来て、俺の目的が単なる「刑事に憧れてる高校生」じゃないことを見抜いていたに違いない。
そうなったら話が早い。
「前に……倉庫で家事があったじゃないですか…?確か…そこで焼死体が見つかったとかで…
そのときガールフレンドが近くに住んでて怖がってたから」
と、よそ行きの声を出してにこにこ切り出すと
「は!?ガールフレンドって、朔羅のことかよ!てかあいつはそんなタマじゃ…」
と言いかけたところ、一ノ瀬の親父が手で遮って
「倉庫?どこの?」と低く言い、ほんの一瞬眉をひそめた。
俺は一ノ瀬と一ノ瀬の母ちゃんには分からない程度で口元に笑みを浮かべると
「杉並区」
ちょっと身を乗り出して、テーブルに手をついた。



