結局、新垣 エリナから小銭を受け取り、それを尻ポケットの財布に仕舞いこもうとしていたとき
「これで変な罪悪感とかなくなるしね」と新垣 エリナは「えへへ」と笑った。
新垣 エリナの笑顔を見て、「はぁ」俺は大きなため息をつき脚を組むと背もたれに背を預け腕を乗せた。
「なぁに?ため息?幸せが逃げちゃうよ?」と新垣 エリナは笑う。
「幸せ……かぁ。
ごめん」
俺は謝った。
「いや、謝ることじゃないし…」新垣 エリナはわたわたと手を振る。
「いや、そゆうんじゃなくて。
新垣さんさ、あいつ……タイガの野郎が好きなんだろ?」
突如の俺の発言に新垣 エリナは大きな目を開き、目をぱちぱちさせる。
「何で知ってるの…?あ、サクラから聞いた?」ちょっと顎を引き、目を上げて探るように聞かれ
「いや?あいつが直接言ったわけじゃないけど、何となくそうかな…って」
嘘です。さっき全部会話を聞いてました。とは言えねぇ。
新垣 エリナはこっちが分かる程顏を赤くして
「ヤだなー!何かそうゆうの男の子に知られるの、恥ずかしい…女子同士だったら盛り上がるんだけど」
新垣 エリナはオレンジジュースのプラカップを両手で包みストローに口を付けようとした。その手に俺は自分の右手を重ねた。
重ねる、と言うより行動を阻止する意味で。
「龍崎くん―――…?」
新垣 エリナが探るように聞いてきて
「理由は言えない。
けど、あいつだけはダメだ」
低く言うと、またぞろ新垣 エリナは顏を上げて大きな目をまばたかせた。