俺が本気と取ってなかったのが不服なのか、兄ちゃんは
「ホントだよ、一年前に友達同士だったカップルが、今年恋人になったって」
と真剣。
てか男女の友達同士であんな雰囲気のある所に行きゃ、二人とも少なくとも好意はあるに決まってるだろ。
クリスマスイブに過ごす男女の友達同士とかと一緒だ。
「ご心配ありがとうございます~」俺は笑顔で小銭を受け取り、一応は納得した素振りで新垣 エリナの方へ向かう…
途中、ふと振り返った。兄ちゃんがちょっと目を開く。
「俺は取られへんで。
朔羅を一番愛しとるんは俺や。例え幼馴染相手でも容赦はせぇへん」
一言言ってやると、兄ちゃんが目をまばたき、びっくりしたように肩を縮めこませた。
誰に物言ってンだ。俺はヤクザやぞ。
そんなアホみたいなジンクス信じるわけ……
俺は風車小屋のてっぺんを見上げた。
……ちょっと気になるかも。
「なんだかな~…」と頭の後ろを掻いて新垣 エリナの隣に腰掛けると
「お帰り~、ありがと」と言ってオレンジジュースを受け取り、その後慌ててバッグから財布を取り出した。
「いや、ええよ。それぐらい」俺が苦笑を浮かべると
「良くないよ。だって龍崎くんはサクラの彼氏だし」
だから何??
と言う目で目をぱちぱちさせてると
「大勢だったら素直に喜ぶけど、サクラが居ない二人のとき優しくするのはサクラに良くないよ、てこと」新垣 エリナは微笑みながら目を伏せる。
う゛~ん……学園のマドンナだけある。
普通に可愛いジャン。顏が、てのも勿論あるけれど中身もマドンナだな。
俺が朔羅と出会ってなかったらイチが(最初の頃)モーション掛けてきてもすぐ乗ったし、新垣 エリナが(最初の頃)告ってきてもOKだった。
……が
俺は見つけたんだよ。
運命の女っての。