朔羅から聞いてた年齢は46歳で歳相応の雰囲気だが、顔はどっちがヤクザだよ、と突っ込みたくなるぐれぇ極悪顔だ。マサさんといい勝負だな。
「ふー、暑ちぃ、母さんビール」と言いながら、のんびり入ってきて俺を目に留めると
「あ、お客さん?」と慌ててタオルを首から抜き取る。
「そうなのー、千里のお友達でね、龍崎くんて言うのよ~
朔羅ちゃんの従兄妹ですって」
と母ちゃんがころころ笑って「ビールだったわね」と言い、冷蔵庫に向かう。
俺は見逃さなかった。一ノ瀬の親父の眉がぴくりと動いたのを。
正直、この親父が俺のことをどこまで知ってるか分からなかったが、少なくとも俺が“龍崎ではない”ことを知っている、そんな感じだ。
だが険しかった視線は一瞬だけで、次の瞬間笑顔になって
「そうか、千里と仲良くしてくれてるみてぇだな」
と言い俺の向かい側に腰を降ろすと、母ちゃんが取り出したビールを受け取り、何でもない素振りで缶に口を付ける。
さすが「組対」なだけある、場馴れしてるって言うか、見慣れてる感じだ。
一ノ瀬の親父の隣で
「別に!仲良くねぇよ!」と一ノ瀬が目を吊り上げていたが、一ノ瀬の親父はビールを飲みながら
「こんな倅だが仲良くしてやってくれ」とぶっきらぼうに笑う。
不思議だ……
笑うと余計に人相が悪くなる。
流石「マルボウ」だな。一ノ瀬は母ちゃん似で良かったんじゃね?



