椅子に座るやいなや
「一ノ瀬くんそれで足りるの?」とエリナが切り出した。どうやら千里のトレーの乗ったパンを覗き込んでいる模様。
「新垣さんこそ……少食?俺の場合、ここ色々あるから食べ歩きしたいなとか思って…」と千里がマップを広げてエリナに見せている。
ナイス千里!いいぞ、女の子をリードできてる。
「実はあたしもそう思ってたんだ~カフェオレ味のソフトでしょ?ジャムが入ったプリンとか」
おおっ!千里の案に乗った!いいかも、いいかも!♪
「あ…でも、一ノ瀬くん甘いものダメだった?ごめんね勝手言って」
エリナの声がしゅんとなる。
「い…いや!実は俺も甘党だから気になってって言うか…。かき氷も食いたいなーとか思ってたし」
ナイス千里!
「かき氷?いいね、その案」エリナは明るく笑った。
「それに、雑貨屋てのもあるし…女子は好きでしょ?こうゆうとこ」千里がマップの一部を指さし
いいぞ!千里っ!!
あたしはガッツポーズ!
二人はそれぞれのパンを食べ始め
「もういいんじゃね?お前が心配する程でもなくね?」と戒がこめかみを掻きながら面倒くさそうにため息。
「だけど……」言いかけたときだった。
「……何か、ごめんな」と千里が言い出し、あたしもエリナも顏を上げた。
「え?」遠目から見ても分かる。エリナが不思議そうにしていることが。
「新垣さんに気を使わせてばっかで……あのメンバーだからさ、まとまりねぇし…」
おい!まとまりないって言うなっ!!
「…それに…あまりものの俺に付き合ってくれて」
「あまりもの?」エリナが不思議そうに首を傾ける。
「何だかんだ、カップルできあがってるし。だからあまりもの。それに、どう見ても不釣合いだろ?俺なんかと新垣さんが一緒にいるの…」
千里が顎を引く。
「不釣合いって何?」
エリナの声がちょっと低くなった。
「一ノ瀬くんは誰の目を気にしてるの?誰だったら吊り合いが取れるの?自分を下に見て、それで一ノ瀬くんが言う“吊り合う”女の子が居たら、その子に失礼だよ」
エリナ――……



