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遡ること3時間前。
夜も9時を迎えようとしていた。俺は前に朔羅から聞いてた住所を頼りに、ある一軒家の前でその建物を眺めた。時間が時間なだけに訪問するのはどうかと思われたが、一刻も争う事態に常識とか考えてられねぇ。
だけど
“あいつ”と何気によくつるんでるけど、実は“あいつ”んちに来たのは初めてで―――
俺は門扉の横に表示されている表札をしっかり確認し
インターホンを押した。
『は~い』
と、すぐに中から明るい女の声で応答があり
「夜分恐れ入ります、僕……一ノ瀬くんのクラスメイトで龍崎って言います」
と言うと
『千里の?ちょっと待ってね~』
と答えが返ってきて、その3分後に、驚いたような、不機嫌なような複雑な表情をしながら一ノ瀬が玄関の扉を開けた。
「よ~お」と気軽な感じで手を挙げると
「何が『よ~お』だ、うちに何の用があるんだ。朔羅なら来てないぞ」
と一ノ瀬が不機嫌オーラ全開……てか威嚇??して俺を睨む。
「お前じゃなく、お前の親父さんにちょっと用があるんだワ」と言うと
「は?」と一ノ瀬は今度は怪訝な表情を作り
そんなやりとりを聞いていたのか、いないのか一ノ瀬の背後から
「千里~?お友達でしょ?中に入ってもらいなさい」と声が掛かって、一ノ瀬はしぶしぶと言う感じで顎で中を示す。
「誰がダチだよ」と一ノ瀬は不服そうだったが、明るくて親切な母ちゃんに感謝だな。



