。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。


玄蛇は響輔に手を出さないって言った。約束は守る男だ。今までだってあたしたちの仲で裏切りなんて無かった。


でも―――あの言葉を信じていいのだろうか。


響輔はあたしの「消して」と言う言葉を守ってくれて、室内はすぐに静寂に包まれた。


「……ごめん、一方的なこと言って」


素直に謝ると「別に……あんたが一方的なん今に始まったことやないし」と響輔はそっけない物言い。


「ごめん……ちょっと…怖い夢見て…それがちょうどオペラ座の怪人だったの」


素直に説明すると、響輔はちょっと微苦笑。


「あんたも案外ロマンチックなんやな」


「何よ。『案外』って。しかもオペラ座の怪人て全然ロマンチックじゃないじゃない」


口を尖らせていると、


「ロマンチックやん。結局主人公のクリスティーヌは怪人に恋心を抱く……」


響輔はあたしの顏を覗き込みながらちょっと微笑んだ。


「そうなの?」知らなかった。まるで『美女と野獣』みたい。


だけどオペラ座の怪人は美女が野獣にキスして王子様に戻る、ことはなく…





「でもその先に待ってたんは―――


―――怪人の死。




クリスティーヌを愛して、彼女も愛を返してくれた。やから“生ける花嫁”を解放する為、自ら命を絶つんや」




自ら―――


あたしは眉を寄せた。


慌てて頭を振る。あたしは玄蛇のことを好きにならないし、ましてや結婚する気もない。


だって相手暗殺者だし。そんな人無理、無理無理、絶対!無理。


でも、愛し抜いてくれて―――


その先は……?