◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.・◆・.。*†*。.◆

.。*†*。. 一結Side .。*†*。.


遠くでバイオリンの音が聞こえる。透き通るような音色。


記憶にあるイントロ。流れるように滑らかな……このメロディは耳に心地良い。


バイオリンの音に混じってカラカラ…


渇いた音が遠くで聞こえる。


これは―――何の音……?


耳を傾けていると、辺りの様子が分かった。あたしがどこにいるのか認識できた。


そう、ここは―――


劇場だ。


大きくて広い。煌びやかな照明。たくさんの観客たちで埋まる見るも鮮やかな(くれない)の席。その広い通路をあたしは歩いている。


古いフランス映画とかでしか見たことのない舞台。




―――オペラ座




そうだ、あたしは女優だったんだ。



あたしは―――



女優




カラカラ…


またも音が聞こえて、それが映写機を回す音だと気付いた。


そっか、これは映画の撮影なのね。


でも映写機って映画を映しだすときに鳴る音よね。でも…そんな小さなことどうだっていい。


ウェストから裾までたっぷりとボリュームのあるレースやチュールをあしらった白いドレス。まるでウェディングドレスみたい。


ふと顏を上げると、舞台からタキシード姿の響輔が微笑を浮かべながらこちらに手を差し出していた。


ロンググローブをした手を伸ばし、けれど手を重ねる瞬間、


キラキラ…


光の粉のようなものが舞い眩しい。まるでダイヤモンドの光のような―――


これは―――どこから降ってくるの?


あたしは顏を上げた。


見上げた先にあったものを見て、あたしは固まった。慌てて客席を見渡すと、さっきまで拍手喝采だった観客たちが誰一人として居なくて、がらんどうの客席はさっき見た見るも鮮やかな紅色から白黒に変わっていた。緞帳もボロボロの布きれと化している。


あたしは息を呑んだ。


再び頭上を見上げると、眩しい程の輝きが押し寄せるかのように圧迫してきて、あたしは叫んだ。




「響輔ーーー!!」