着信はメール受信の音だったみたいで、メールボックスに新着のメールが一通入っていた。


「龍崎くんからだ、何だろ」


「俺の方も。戒の兄貴からだ。何なに…」


あたしより早く先輩の方が開封したらしく


「諸事情によりちょっと遅れるから別荘に戻ってろ、だって」


念のためにあたしの方も開くと、先輩と同じ内容が綴られていた。またも二人して顏を見合わせる。


諸事情って…何??


もしかして何か危険なことでも!と一瞬焦ったけれど、朔羅と龍崎くんが一緒なら大丈夫だよね。何て言ったってあの二人が揃うと最強だから(色んな意味で)


しかし…


「う゛~ん、今あそこに戻るのもなぁ…」


響輔さんとyouも居るし……二人一緒の所とか見るとまたキマヅイ。いや…キマヅイって感情は二人セットの所を見るのが…と言うわけじゃなくて。


「確かにそうだよな…でも戒の兄貴の言うことは絶対だしな」


先輩はどうしていいのか困ったと言う感じに頭を掻く。


でも先輩の言うことは一理ある。龍崎くんは無駄なメールをしてこない。いつも意味があることだった。その意味があたしには分からない部分があるけれど、それでも無視できない重要なことをいつも伝えてるのは確か。


「戻ろっか…」

「戻りましょう」


あたしと先輩の言葉が重なり、二人して思わず苦笑。


手ぶらで戻るのも何だから、と言う理由であたしたちは手土産を買っていくことに。


でもあたし…youが何好きなのか分かんない。


同じように隣で先輩が首を捻っていて、


「キョウスケの兄貴って何がいいんだろ。いつもコーヒー飲んでる気がするけど」


「響輔さんはコーヒーブラックですよ」言いかけて「あ!龍崎くんもコーヒーはブラック派だったなー」とわざとらしく添える。「千里はコーラが好きだけど…」あたしの声はどんどん小さくなった。


「そっか!俺はカフェオレが好き」先輩が元気に言い


「知ってます。見た目に寄らず結構甘党なとことか」


とあたしが笑うと


「俺だってリコちゃんが何を好きなのか知ってるもん」と先輩は子供っぽく口を尖らせる。


「じゃぁお店で買って帰りましょう」カウンターを指さすと、「そうだな」と先輩は機嫌よく答える。


あたしたちは―――改めて好みを聞く関係ではなかった。だいぶ前から好きな飲み物食べ物を知ってる、そんな関係も


結構いいよね。



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