「いや!すみませんっ!今のはナシ!ちょっと早まり過ぎっ!もー!何言っちゃってンのあたし!」
早口でまくしたて、わたわたと手を振って赤くなった顏を覆っていると、先輩の口からポロリとタバコが落ちたのが指の隙間から見えた。幸いにも火の点ったタバコは灰皿に落ちた。
先輩は目をまばたいていて
わ゛ーー!あたしのバカ!!ホント、バカ!
思わず頭を抱えたくなったけれど
「そっか!そうだよな!俺、野球チーム作れるぐらい子供欲しいな!でも11人って大家族だな~テレビに出れそうかも!そしたら一躍有名人じゃん!?」
先輩……
「野球チームは9人です。11人はサッカーです」
冷静な部分のあたしが訂正すると
「あ、あはは!」と先輩は恥ずかしそうに頭に手をやる。
どうやらあたしは(響輔さんを覗いて)おバカな子に惹かれる気質なようだ。
でも…先輩はあたしとの未来を描いてくれるんだ。まだ付き合いたてなのに。こんなあたしを好きでいてくれる。
あたし―――……ずっとずっと先輩と一緒にいたい。
先輩も同じことを思ってくれると嬉しいな。
同じことを―――…
先輩は僅かに顏を赤くして、その表情を悟られないように手で隠すと
「やべー」と一言。
「え?」
「俺、今…超リコちゃんとキスしたい」
え!?
「で、でででででもっ!そ、外ですよ」
あたしの顏がまたも熱くなるのが分かった。その火照りを鎮める為に顏を隠すように手で覆い、その手を先輩の手がやんわりと剥がす。これと言って示し合わせたわけでもないのに、あたしたちは顏を近づけ……
~♪!
唇が触れ合う瞬間、二人のケータイに着メロが鳴った。
な、何でこのタイミング!!
二人して思わず顏を見合わせる。
「な、何か……恥ずかしいですね」あたしは思わず苦笑を浮かべると、先輩も同じ表情。
「そうだな…やっぱ外で…しかも真昼間てのはハードルが高いか」と悪戯っぽく笑い、二人してケータイを開いた。