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ソフトクリームとかき氷を食べ終え、食後の一服と言う感じで先輩がタバコを取り出した。
あたしはそれに何も思わなかった。イイともイヤとも。つまりそれが先輩の通常だから。今更気にすることではない。まぁ『タバコ吸う人キライ!』てタイプでもないし、そりゃ好きじゃないけど。響輔さんだって吸ってるし。
と考えていると、先輩は見知ったパッケージから一本のタバコを抜き取っているところでそれを自然な仕草で口元に運び、タバコの先に火を当てる……ところになって、慌ててライターを遠ざけた。
タバコに火はついていない。
「どうしたんですか?」
あたしが首を傾けると
「うん…やっぱさ、良くないって気がして」
「今更?」あたしが笑うと
「今更」先輩は大真面目。
「何つうか、今までワルい俺かっこいいだろ?みたいな勘違いしてたけど、それは大いなる勘違いで」
大いなる勘違い……何だか笑っちゃう。けど笑っちゃダメだな…先輩は大真面目だし。
「ワルい俺に群がる女もたかが知れてた。俺は―――リコちゃんに吊り合う男になりたい」
吊り合い―――……
「……て、そもそも何ですかそれ。必要なんですか」
あたしが苦笑いを浮かべると先輩は目をパチパチ。
あたしは先輩の反応を待たずとして頬杖をつき、遠くをぼんやりと眺める。目の前に広がる青い海、若い男女がはしゃぎ声を挙げて沖の方へと向かって行く。はたまた同じ年代の水着姿の女の子たちが海をバックに自撮りをするのに夢中だったり…
「そんな上辺だけや体裁的なものいりませんよ。あたしは―――今までの先輩でいて欲しいって思うし、丸ごと受け止めたい」
「リコちゃん―――」
先輩が目を揺らし、今度こそ火を灯す。
「何か、勿体ない気がするな。俺みたいな男んとこに、こんな顏も中身も可愛い子が…」
顏も中身も可愛い!!?
ボッ!
顏から火を噴きそうになっていると
「じゃー、今日だけは解禁」
「でも、いずれ辞めてくださいね?」あたしが言い置くと
「いずれ?」
「うん、だって子供には良くないから…」言った後になってはっとなった。
ちょっと待てあたし!



