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「てか、あのアイス代、俺の財布から払ったんじゃね?かっこつけやがって。ちゃんと返せよ?」と前を歩く戒が忌々しそうに千里を睨み


「分かってンよ!細かい男だな!そんなんだと朔羅に嫌われっぞ」と千里が睨み返す。


その姿を見て、隣を歩いていたエリナがちっちゃく笑った。


「あの二人面白いね」


「面白い?うん、まぁ、面白いっちゃ面白いな。当事者じゃなけりゃぁな」


「サクラはいいね。優しい彼氏とかっこいい幼馴染がいて」


行きの電車で聞いた言葉は、今度はちょっとだけ違う意味に聞こえたのは気のせいだろうか。


「まぁあたしが言うのもなんだけど、アイツいいヤツだよ?千里。


昔はどっちかって言うとあたしより泣き虫で、ことあるごとにピーピー泣いてて、その度にあたしが駆けつけて、てのを繰り返してた」


「あはは」とエリナは明るい声を挙げて笑った。その声にはさっきまで怯えて怖がっていたものは感じられなくてほっとした。


エリナはあたしの手にそっと手を絡めてきて、いつだったか、前も―――あたしたちはこうして手を繋いで歩いた。


「サクラ、ありがとうね。


この旅行、残り半分だけど、全力で楽しむ。



この年の夏は二度とこないから」


エリナはちょっとはにかみながら笑って


「さっきの一ノ瀬くんの言葉を借りるけど、楽しまきゃ損だしね」


「うん」


あたしもエリナの手をきゅっと握り返した。