手荒なことはしたくない、と思ったが、それが本心なのかどうか俺は分からない。
きれいごと、だと心の奥底でもう一人の俺が囁いている。
それはまるで悪魔のように残忍で、凶悪な―――
だが俺が相手にしているのは、想像の世界で創られた悪魔でもなく、現実世界でヒトゴロシをしているヤツだ。俺の頭や心の中より、もっとタチが悪い。
「いいか?15分経っても動きがなければ、突入だ」
俺は目視で確認できる窓から明かりが消えている一軒家を目配せ。
「了解」
タイガが来るか、それとも伊予原 椿紀が先に動くか―――
気づけば日を跨ごうとしている。この時間帯だから寝ていてもおかしくないが、
逆に寝ていて欲しい、と思う。
寝込みを襲う、なんて趣味が悪いが、趣味以前の問題だ。
変に怪しまれるといけないから、車のエンジンを完全に切ったが、途端に暑くなる。
エアコンの冷気がまだ車内を満たしているが、これも恐らく15分で限界だ。
その15分の間で、俺たちは明日のおさらい。
「いいか?今日、収穫が無かった場合、俺はバイトに行く。
お前も貸金業……か、イチの元でもいい、とにかく朔羅に気づかれないように“普通”を装えよ?」
「俺はいつも“ふつー”ですが。戒さんは顔に出やすいから、気を付けた方がいいですよ」
と、ありがた~~~い、アドバイス。
「うっせぇ!分かってんよ」
「喧嘩っぱやいところも直した方が」と響輔は単眼鏡を構えながらブツブツ。
まぁ俺の性格は置いといて~