何でだ―――…
何であたしは気配を読み違えたんだ?
エリナはあたしに決して悪意を見せてない。ましてや殺気を放ってることもない。今も楽しそうに「アイス食べたいね~」とふわふわ、いつもの笑顔で笑っていて、そこに悪意の欠片も感じなかった。
単なる読み違いだと思いたいが、気を抜けない。何せ脱獄囚が捕まってないからな。
でも、この旅行だけは楽しみたい。
あたしは気持ちを切り替えてエリナと手を繋いだままビーチに戻った。
走る度、砂に足を取られ進みづらい。振り返るとあたしとエリナの足跡が別荘から続いていた。
何となく眺めていると、ふと強い風が吹いて砂嵐が巻き起こった。
「わ!」
思わず目を庇い、再び足跡の方を見ると風がさらっていったのか、足跡は消えていた。
まるで一切の形跡を残さないスネークの存在を急に思い出して思わず身震いが起こった。
一切の痕跡を残さず―――あたしもあんな風に消されるのか、何故だか急に思った。
大丈夫、さっき感じたあの気配はあの巨大で悪意、殺意のあるスネークとは比べ物にならないぐらい。てか、エリナだったんだけどね。
大丈夫。
殺られる前に殺ってやる。
とりあえず…
「リコ~♪待ったぁ?」とエリナの明るい声を聞いて我に返った。
「おそーい」と二人の可愛いやり取りを聞いて、あたしはブンブン首を振った。
せっかく旅行に来たんだから、楽しまなきゃ!!



