東名と首都高を乗り継ぎ、神奈川の伊予原 椿紀の家付近に到着したのは、出発して15分だ。
通常なら30分は掛かる場所をこの脅威のスピードで来れたのは……
響輔のおかげ……と言いたいが
それにしても飛ばし過ぎだ!!
俺、マジで死ぬかと思った!!
響輔は運転席で涼しい顔。
「そんな大げさな」と目が語っていたが、大げさじゃなく、本当に怖いんだよ、お前は!!
と、怒鳴りたいのを堪えていると、運転席で細長い単眼鏡を構える響輔が
「今の所、動きはありませんね」と、静かに言った。
伊予原 椿紀の住所の場所に一軒家が建っている。その数十メートル離れた場所で車を停めてその一軒家を眺めて……いや、睨んでいる。
その一軒家は決して大きくはないが割と新しい感じで、いかにも今風に感じられた。
新垣 エリナのうちとちょっと似ている。
「最寄りの駅から徒歩で15分と言う所ですが、割と立地はいいですね。
一軒家だから土地抜きでも片手はいくでしょうね」
5,000万か。ま、タイガにとっちゃ安いもんだろう。
「人殺した金であの家買って、ヒトゴロシの父親とは知らず子供は育っていく。
こんなバカげたファミリーごっこ、考えられへんわ」思わず悪態が口に出て
「同感ですね」と響輔も頷く。
「でも、子供は何も知らない―――
その方がいいと思います」
まぁな。
出来れば手荒なことはしたくない。