改めて二人きりになると、ちょっと緊張。だってキョウスケの変なシーンを二度も目撃しちまったし。
「あ、あたしはジュース取りにきたんだ」
くるりと踵を返してキッチンに向かうと
「俺も水飲みます」とキョウスケも立ち上がった。
何となく…二人で冷蔵庫に向かう。エリナ……早く戻ってきてくれないかな…
変なの。前はキョウスケと二人っきりになっても何も思わなかったし、こいつはいつもあたしを助けてくれた、守ってくれた。キョウスケの手もまなざしも全部あったかかった。
そのあたかかいまなざしも体温もキョウスケが向ける先はイチなんだ……改めて思うと、やっぱり緊張だ。変な意味ではなく
……そう、あたしはこう思ったんだ。
「キョウスケ、今幸せ?」
突然のあたしの質問にキョウスケは目をぱちぱちさせ、ちょっと考えるように首を捻り
「ええ、幸せです」
とはっきり言い切った。
あたしはちょっと笑った。それを聞けて、安心したんだ。
キョウスケはあたしたちの為に自らを犠牲にしたんじゃないか、ってやっぱ心の中でくすぶっていたから、ちゃんとイチのこと好きになって大事にしたいって思って、温めてあげて―――
キョウスケが幸せだとあたしも嬉しい。
あたしは心から笑った。
はじめて、ちゃんと笑えた気がした。
その顏を見てキョウスケがちょっと微笑みを返すと
「以前お嬢は言いましたよね。好きな人を諦めるときその人のこと、憎んで恨んで……」
確かに言った。あれはMIRACLEランドに行く前日だった。
「そうするつもりは毛頭なかったけど、本当にそうしなくて良かった、って思ってます」
キョウスケは淡い笑みを湛えたままほんの僅か目を伏せる。
「ひとを恨むより、憎むより―――愛することの方が簡単だし、大切なことだと思います」
うん、あたしも―――ホントはそう思う。



